INNER TRIP #1

3月の途中までさんざん書いてきた通り、この夏はロシアへと渡り、最東端に向かって走るつもりだった。その目標に向かって、気持ちをおもいっきり昂ぶらせて準備も進めた。しかし。その夢を諦めざるをえないとてつもない出来事が起こり、しっかりとイメージしていた姿は儚く淡い、にじむピンクのような感じになった。

俺の心は、一つの物事を常に二律背反にとらえる癖がある。

俺の夢は命を懸けても惜しくないほど大切で、自分らしく生きる上で必要不可欠な何よりも尊いものあると同時に、最もどうでもいいただの独りよがりなもので、なんの価値の無いものだとも思っている。いま、戦地で起きている出来事を想像すれば、そこでただ当たり前の日常を守ることに全身全霊を懸けている人々の姿があることを現実として思い浮かべれば、俺の夢なんて恥ずかしいぐらいにどうでもいいものだと思っている。

じっとしてはいられず、普通ならいつも出かけてしまう自分。しかし、2020年から国際間移動が制限され、3年目に突入した。今年こそ「行ってやる!やってやる!!」と、溜まりに溜まったエネルギーを発散するはずだったが、隣国のロシアは政治的に世界で一番遠い地へと変わり、戦争が終わっても向こう何年か自由に旅するには難しい状況が続くだろう。その上でさらに、自分が目指しているのは平常時でもロシア政府からの許可証が無いと入れないチュクチ自治区にある、地理学的にも最果ての場所になる。

ユーラシア大陸最東端のデジニョフ岬はロシアにしかないし、そこへバイクでたどり着きたい憧れは心に深く刻み込まれ、永遠に消えはしない目標だ。しかし今は、自身の尊い夢を前時代的な国家の中に描くこと自体ナンセンスだと感じ、熱い想いがキンキンと音をたてて自然冷却されて、片隅に置いてしばらく放っておいても大丈夫なぐらいに冷めた。

しかし、決してこの状況を悲観してはいない。

むしろ、これはチャンスだと思った。大抵の人は自ら行かない選択をして行かないが、自分で言うのも何だが俺のような情熱的行動的なタイプは何があっても行くから、行きたいけど行けない、これはちょっと難しいからやめておこうなんて思う状況は、人生でもそうそう無い。

いつも外ばかりに目を向けて出かけてしまうから、こうでもならないと止まらず、逆に足元を見つめて踏み固める良いタイミングなんじゃないか?と考えた。今までなんとなくOKで済んできた、日常生活での理想を実現するチャンスだと。自然豊かな場所に住み心身の健康を大切にし、すべてをお金で買ってそのために仕事ばかりするライフスタイルを忘れ、消費型社会から脱した生活に努めてみたい。

そのためには、そのような場所で実際に日常生活を送ってみる、実践してみることが不可欠だ。どこか外国に旅に出る必要はない。もちろん今は、という意味で、この先一生国内で過ごすという意味ではない。これまで外に出て、違う文化や異なる価値観や新しい視点を吸収することばかりを優先してきたが、そろそろインプットよりもアウトプットに取り組む時が来たのだ。これまで人の何倍、いや何十倍?もの国々を旅してきたから、普通ならもう充分なのだろう。まだまだ行ってない場所が、国があるぜ!!と、カントリーハンターになるよりも、国を変えて同じ行動を繰り返すよりも、国内でライフスタイルに変えてみれば新しい「旅」がはじまる予感がする。

書ききれないから、INNER TRIP #2 に続きます。

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